Webサービスをつくる上で、PC版かスマホ版か、あるいは両方でリリースするのかは重要な問題です。 企画する側としてはどちらもあって然るべきと考えがちですが、正しい基準をもって判断しないと、大きな課題を抱えることになります。 このことについて、問題点や解決策を述べます。

ブラウザかネイティブかでも話は変わってきますが、ここではブラウザに限って述べます。 ただ、基本的な考え方はネイティブとの比較でも同じだと思いますので、ぜひ参考にしてください。

問題点

PC版とスマホ版の両方をつくる場合、どちらか片方のみに比べて、以下のような問題があります。

  1. 開発速度が遅くなる
  2. コストがかかる
  3. 技術的負債が大きくなる

1-2は非エンジニアでも理解しやすいと思います。 1つの機能について両方に対応するため開発工数がかかり、工数に応じて人件費がかかってしまいます。 どちらかに限定することで、機能を早く、低コストで開発することができます。

どちらかというと問題なのは3です。 対応を増やすことでコードの複雑さが増し、長く開発していくにつれて開発速度の低下に影響を及ぼします。 優秀なエンジニアがいれば影響は軽減するでしょうが、スタートアップの場合そうでないことが多いでしょう。

資金のないスタートアップで、とりわけスピード感が重要な初期段階においては、どちらかに絞った方がいいでしょう。 少なくとも、複雑さを担保するほどのメリットがあるかどうかをしっかり検討する必要があります。

選択肢

どのデバイスを対象に開発を進めるかという戦略について、以下の4つのパターンが考えられます:

  1. 両方つくる
  2. どちらか一方のみをつくる
  3. まず両方を簡易的につくり、リリース後に判断する
  4. 一方をメイン、もう一方をサブとしてつくる

1. 両方作る

PC版とスマホ版の両方をつくることで、ユーザをもれなく確保できるというメリットがあります。 また、投資家向けにも見た目はよいでしょう。

ただ、1つの機能について2つのインタフェースを提供しなければならず、開発速度の低下やコードの複雑さを招きます。 どちらも必要である、という理由が明確でない限り、避けた方がいいでしょう。

2. どちらか一方のみをつくる

どちらか一方のみをつくることで、開発リソースを集中でき、サービスをすばやく改善することができます。 ユーザの利用デバイスが明確である場合など、判断が容易であればこのパターンを積極的に採用すべきだと思います。

3. まず両方を簡易的につくり、リリース後に判断する

企画段階でユーザの利用シーンが判断できない場合、まずリリースし、リリース後にPC版かスマホ版に絞る、というパターンも考えられます。 もちろん、両方の開発を続けるという選択肢もありえます。

デバイスを絞ることが運用目的になっては本末転倒ですが、どちらにも舵を切れるような柔軟さを確保しておくことは、コード的にもいいリスクヘッジになるでしょう。

4. 一方をメイン、もう一方をサブとしてつくる

これは特殊なケースですが、たとえばスマホ向けコミュニティサービスなどで、PC版向けに閲覧画面だけ用意するというのも選択肢のひとつです。 両方をつくるリソースがない場合でも、ある程度のメリットは享受できる(SEOなど)ため、このパターンも検討しましょう。

判断基準

上記の選択肢のどれを選ぶかについて、以下のような基準が考えられます。

利用シーン

ユーザが仕事かプライベートか、あるいは家か外出先か、どういったシーンでそのサービスをつかうかが、デバイス選定の大きな基準になるでしょう。

たとえばGitHubは開発者向けのサービスなので、PC版をまず提供すべき、という判断ができると思います。

SEO

そのページが検索元デバイスに最適化されているかどうかは、SEOにとって重要な要素のひとつです。 PC/スマホの両方でSEO対策が必要な場合、選択肢1または4がよいでしょう。

プッシュ通知

プッシュ通知による喚起が重要な要素になる場合は、スマホを優先すべきでしょう。

ブラウザだと関係ないかもしれませんが、ブラウザでビジネスモデルが検証できたらネイティブに移行するケースもあり得ます。 それを見越した上で、デバイスを選択することもいいと思います。

事例

Meryは、2016年2月発行のプレスリリース(※PDF)によると、ユーザ比率はスマホ版が93.8%、PC版が6.2%です。

Meryのようにビジネスモデルが確立していれば、比率の少ないデバイスにも注力する価値はあると思います。 ただ、スタートアップの場合、ユーザの9割がスマホしか使わなければ、スマホに注力してビジネスモデルを確立すべきでしょう。 1割のユーザをとるべき明確な理由ができた時点でつくればいいと思います。

一方で、クックパッド2015年12月期の決算資料(※PDF)によると約25%がPCによるアクセスです。 買い物や料理中はスマホによるアクセスが想定されますが、家でのんびりレシピを決めるときなど、PC版の需要もあるでしょう。 こういったサービスの場合、はじめから両方をつくる理由になると思います。

おわりに

ビジネスモデルが不安定な初期の場合、それを確立するために、いかに改善するかが重要です。 「とりあえず両方つくる」のではなく、開発速度などを犠牲にしてまで両方をつくるのか、しっかりと考えましょう。